夏の夜の親子丼

三島由紀夫、原敬、鳩山一郎らが愛した新橋の「末げん」の親子丼……には、
ほど遠いが、ふわとろ親子丼に挑戦。

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親子丼は、太宰作品にもちょいちょいと出てくる。
『乞食学生』、『黄村先生言行録』では、こんな風だ。

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親子どんぶりがあるかね?」と私の傍に大きなあぐらをかいて、落ちついて言い出したので、私は狼狽した。私の袂には、五十銭紙幣一枚しか無いのである。これは先刻、家を出る時、散髪せよと家の者に言われて、手渡されたものなのである。けれども私は、悪質の小説の原稿を投函して、たちまち友人知己の嘲笑が、はっきり耳に聞え、いたたまらなくなってその散髪の義務をも怠ってしまったのである。
「待て、待て。」と私は老婆を呼びとめた。全身かっと熱くなった。「親子どんぶりは、いくらだね。」下等な質問であった。
「五十銭でございます。」
「それでは、親子どんぶり一つだ。一つでいい。それから、番茶を一ぱい下さい。」
(『乞食学生』)
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一ばん近くの汚い茶店にのこのこはいって行って、腰をおろす。
「何か、たべたいね。」
「そうですね。甘酒かおしるこか。」
「何か、たべたいね。」
「さあ、ほかに何も、おいしいものなんて、ないでしょう?」
親子どんぶりのようなものが、ないだろうか。」老人の癖に大食なのである。
 私は赤面するばかりである。先生は、親子どんぶり。私は、おしるこ。たべ終って、
「どんぶりも大きいし、ごはんの量も多いね。」
「でも、まずかったでしょう?」
「まずいね。」

(『黄村先生言行録』より)
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茶店で親子丼、なんて出たんですね。
汚い茶店で出る、親子丼は確かに美味しくなさそうである。

今度は「末げん」まで足を伸ばすか。



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寂しい過疎の町でも日々はいつも新しい(『向田理髪店』奥田英朗)


向田理髪店


北海道の寂れた炭鉱の町にある「向田理髪店」。
客は昔から知った顔ばかりだ。

店主の康彦は、一度は札幌に出て大学生活を送り、
そのまま就職したが、結局、家業を継ぐことに。
父のヘルニアがそのきっかけだったが、それだけではなかったことが、
物語を読み進めるうちに明らかになる。

短編が連作となっている本書は、
康彦の息子が東京から戻ってきて、
後を継ぎたいと言い出すことから始まる。
 
「おれは地元をなんとかしたいわけさ。
このまま若者がいなくなったら、苫沢はどうなるべ」


父としてはうれしい息子の申し出のはずだが、康彦は懐疑的だ。
東京から来た総務省の官僚やイベントプランナーが、
講演会で過疎地の可能性を語れば語るほど、康彦の違和感は増大するばかり。
聴衆の反感を買うのを承知で、ついに口火を切ってしまう。

「東京の人たちが、自分たちはこの先乗船するつもりもないのに、
 地元の若者たちをおだてて、船にとどめようというのは、
 なんか無責任じゃねえのかって、そういうことを思うわけです」


本書は、過疎地で起こるささやかなドタバタを描きながら(なかには大事件もあるが)、
そのなかで、生き生きと暮らす人々の姿を康彦の目線を通じて描く。

通りに人気がなくても、そこに暮らしがあれば、日々はいつも新しい。


取り巻く世界は読書で変わる(『目でみる漢字』『よくわかる元素図鑑』)


目でみる漢字

小学生になったばかりの息子。
もともと、文字が書くのが好きだが、ひらがなよりも漢字のほうが、書きやすそう。
角ばっているから書きやすいのかな、と思っていたけど、それだけではなさそう。
漢字のほうが、意味と形をイメージしやすいようだ。

『目でみる漢字』は、そんな息子の想像力を育むのに一役買っている。
「王」なんて、これで一発で覚えるもの。

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大人向けの本で、子どもが読んでも楽しい本はたくさんある。
『よくわかる元素図鑑』もその一冊。
美しさに見とれているうちに、学者になっちゃうなんてこともあると思う。


よくわかる元素図鑑

夏休み、まっさかり。
たくさん遊んで、たくさん本を読むべし。


著作一覧
プロフィール

真山知幸

Author:真山知幸
真山知幸。執筆業。著書に『大富豪破天荒伝説』(東京書籍)、『君の歳にあの偉人は何を語ったか』(星海社新書)、『天才100の名言』『不安な心をしずめる名言』(PHP研究所)、監修に『恋する文豪』(東京書籍)など。他の筆名含めて著作は計23冊(うち監修2冊)。名古屋外国語大学で現代国際学特殊講義など。
【メール】
mayama.tomoyuki(at)gmail.com
※ (at) は @ に置き換えて下さい

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